【皐月五月のご挨拶】


朝の仕事が始まる四時。
かろうじて小田原方面の稜線に夜と朝との境界線を感じるようになりました。

桜が満開に咲き誇る様を、
大人も子どもも、お国をまたいでも晴れやかに見上げていたのもつい先頃。
いま箱根のお山は薫風かおるなかいよいよ生気みなぎる季節となりました。

今朝ほども夜半からしっかりとした雨が降り、
須雲川の水かさも久しぶりに勢いを得ました。すると、お客様が御宿を出られる頃になりまして、抜けるような青空と見事なお日様で。この繰り返しをもって翠は生命に満ちて参ります。

箱根は元気でございます。

桜から新緑へ、つつじへ、苔へと
移りゆく季節。
ほんの少しでもただ歩くだけ、その余白の時間が、風の音、草のにおい、雨の気配、葉ずれのきらめき。忘れていたような何もないことの何かを思い出させてくれるのかも知れません。

あんみつが始まりました。
菓子屋っていいな、目に写る涼を楽しみながら、今日は私も少し余白の時間に身をあずけてみたいと思います。

ちもと主人
杉山隆寛